前回の記事(商人×商人の売買契約(1))で、売買契約の目的物に不適合があった場合、民法と商法とでは、売主へ責任追及できる期間が異なるという話をしました。
具体的には、契約不適合の内容により下記の表のようになっています。
【民法】
契約不適合の内容 | |
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種類・品質 | 数量 |
買主が契約不適合を知った時から1年以内にその旨を通知しなければ請求不可 ※1 | 時効(民法166条1項)により、不適合を知ってから5年or引渡時から10年で請求不可 ※2 |
- 1 売主が契約不適合について悪意重過失の場合はこの期間制限にはかかりません。
- 2 数量不足については通常、早期に判明すると考えられるため、1年の期間制限を設けて売主を保護する必要はないとされています。
【商法】
契約不適合の内容 | |
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直ちに発見できる種類・品質・数量 | 直ちに発見できない種類・品質 |
売主に対して直ちに契約不適合である旨の通知をしなければ請求不可 ※3 | 目的物受領から6か月以内に不適合を発見したのに、売主に対して直ちに契約不適合である旨の通知をしなかった場合や目的物受領から6か月以内に不適合を発見(通知)できなかった場合は請求不可 ※3、4 |
- 3 売主が契約不適合について悪意の場合はこの期間制限にはかかりません。
- 4 数量不足については、民法同様の考えから6か月の期間制限にかからないという説とかかるという説の対立があるようです。
このように、商法では契約不適合が「直ちに発見」できるかどうかで、期間制限の要件が異なっています。「直ちに発見」できるかどうかは、その商取引における一般的な注意義務が基準とされます。
そして、判例(最判昭和47.1.25)によれば、直ちに発見できない種類や品質の不適合であったとしても、それを発見して通知できないまま、目的物の受領から6か月を経過すると、もはや売主への責任追及ができなくなると解されています(学説や下級審では反対説もあります)。
このような商法の規定は、目的物の性状(不適合が早期に判明する類のものかどうか)や取引の性格(転売が予定されているかどうか等)に関わらず適用されることを考えると、買主に酷になることがありえます。そこで、取引基本契約書や個別の売買契約書では、目的物の検収や契約不適合責任について、商法の規定を補充・修正する形で取り決められていることが一般的です。
もし、このような取決めがなければ、商人間の売買契約における契約不適合責任については、上記のような商法の規定が適用されることになってしまいますので、注意が必要です。