週末婚と婚姻費用~最近の裁判例から~

婚姻費用とは、収入や家族構成等の事情に応じて、家庭が社会生活を維持するために必要な費用(簡単に言えば生活費)をいいますが、離婚のいわば前哨戦として、別居した配偶者から婚姻費用の支払を求められることがあります。

支払われるべき婚姻費用の金額は、当事者の話合いで決まらなければ、家庭裁判所に調停(審判)を申し立てることになります。請求された側からは、「相手が勝手に出て行ったのに…」という不満を聞くことがあります。

入籍後、毎週末に会うのみで同居せずに結婚生活を送っていたところ、入籍の約2か月後に、妻から同居を拒否され(週末に会うこともなくなり)、婚姻費用を請求された事例があります(東京高決令和41013日)。

上記東京高裁の原審は、夫婦の生活状況(事実関係が細かく認定されていますが割愛します)から、婚姻は時期尚早のものであって、夫婦共同生活を想定すること自体が現実的ではないなどとして、婚姻費用の請求を認めませんでした。

これに対し、東京高裁は、婚姻費用を分担する義務は、あくまで婚姻という法律関係から生じるものであり、夫婦の同居や協力関係といった事実状態から生じるものではないなどとして、一転して婚姻費用の請求を認めました(もっとも、婚姻関係の破綻に主として責任のある側からの婚姻費用の請求については、否認または減額の余地があるとしています)。

婚姻が法制度である以上、種々の法的効果を伴うということを再認識させられる裁判例といえるでしょう。