民法上、売買契約で引き渡された目的物の種類・品質・数量が、契約内容と適合していない場合、買主としては、売主に対して目的物の修補や代替物・不足分の引渡しを求めることができます。さらには代金減額の請求や契約の解除、損害賠償請求を行う余地もあります(民法562条等)。
従来、このようなトラブルで買主にどのような請求権が認められるか、争いの見られたところですが、近年の民法改正で整理されました。
他方、商法上は、商人と商人の間の売買契約(商法上、「商人」の定義は少しややこしいですが、会社や個人事業主間の取引と考えていいでしょう)、について上記のような不適合があった場合、特別の規定が設けられています(商法526条)。
簡単に言ってしまうと、商人である買主が売主に対して請求できる内容は、基本的には民法上の場合と変わりませんが、請求が認められる期間という点で、買主に厳しくなっています。
買主に厳しい期間制限となっているのは、商取引において法律関係を早期に安定させる必要があり、買主も商人としての専門性から迅速な対応が可能と考えられるためです。
このような違いがあるにもかかわらず、契約書等で十分に手当てができていない場合、思わぬトラブルに発展するおそれがあります。
民法と商法の相違点や実務上の注意点等については次回お送りします。