自然災害と損害賠償

夕方の天気の急変、ゲリラ豪雨も珍しくなくなってきましたが、突風で看板や瓦などが飛散してきて、家の窓ガラスが割れたり車に傷がついたりするなどの被害が発生することがあります。このような場合、どのように対処したらよいのでしょうか。

まずは、火災保険や自動車保険等の各種保険から支払いを受けられないか調べてみましょう。近時の保険契約は、その名称に関わらず、さまざまな補償特約が付されていることが多いので、洗いざらい見てみる(保険会社に問い合わせる)のがいいと思います。

では、保険が使えない場合はどうすればよいのでしょうか。この場合、飛来してきた看板や瓦の占有者・所有者を見つけ、これらの者に対して土地工作物責任に基づく損害賠償請求を行うことが考えられます。

土地工作物責任は、土地の工作物(典型的には建物)の設置や保存の「瑕疵」(通常備えているべき安全性を欠いていること)により損害が発生した場合、その工作物の占有者及び所有者が賠償責任を負うとするものです(民法717条)。

一般的な不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)では、被害者が加害者の故意・過失を立証しなければなりませんが、土地工作物責任では、占有者の方で無過失を立証しなければならず、所有者については無過失責任とされています。そのため、一見、被害者に有利とも思えますが、「瑕疵」については、被害者側で立証する必要がありますので、損害があったら直ちに請求が認められるというものでもなく、「瑕疵」の立証はしばしば困難を伴います。

実際、裁判例でも「瑕疵」の有無が争点となることが多く、例えば、屋根付車庫の壁・屋根等が台風により吹き飛ばされ、隣の建物を損傷したという事例(京都地判令和2年11月2日)では、観測史上に残る強風であったことや近隣でも木が折れる等の被害が生じていることなどの事情から、上記屋根付車庫が通常備えるべき安全性を欠いているとまでは認定されず、建物の損傷による損害賠償は認められませんでした。

日本に住んでいる以上、自然災害は避けられないといっていいでしょう。
ときには保険内容を確認してみてもいいかもしれません。